2013年9月28日土曜日

次回公判の予定


次回の予定は、12月18日(水)10:30からです。

10:30から、埋立免許取消訴訟(従来の自然の権利訴訟)
10:45から、埋立免許無効確認訴訟(追って提訴したもの)

そして、11:00から、祝島漁民による埋立免許取消訴訟も予定されています。ぜひ、あわせて傍聴にご参加ください。

傍聴を希望される方は10:00を目処にお越しくださいませ。

「自然の権利訴訟」第17回公判の報告


 去る7月10日(水)山口地裁にて第17回公判が開かれました。その内容をご報告させていただきます。

 今回提出された第13準備書面によって、山口県知事による埋立免許交付が違法である根拠が非常にクリアになったと思います。その内容を追って説明させていただきます。

■県には防災・避難計画を策定する義務がある
 被告(山口県知事)は、国が原子炉立地審査指針をふまえて電源開発基本計画の中に上関を組み入れたのだから、埋立免許交付にあたって県が改めて判断を差し挟む余地はないのだという主張を繰り返して来ました。

 しかし、国と県との間には役割分担があります。重大事故に至る前のこと、すなわち設備の技術的なことに関する安全審査は国が責任を持ち、重大事故が起きてしまった後のこと、すなわち防災・避難計画の策定と実行に関しては県が責任を持つことになっています。

 そして、そのことをふまえれば、仮に技術的な面での安全審査を県が行えないとしても、防災・避難の観点から独自に判断しなければならないことが県にはあるのです。

 つまり、原発を建てるために海を埋め立てるのであれば、その原発が事故を起こした際に周辺の住民をどのように避難させるのか、あらかじめきちんと想定しておく責任が自治体にはあるのです。そして、もし避難が不可能であるならば「国土利用上適切かつ合理的」であるという判断を行ってはならなかったのです。

■なぜ確認されてこなかったのか
 この防災・避難計画の策定義務に基づく自治体の責任は、これまであまりクローズアップされてきませんでした。それは、安全神話によって事故は起こらないものとされてきたからです。それだけに留まらず、事故を想定することは、地域住民をいたずらに刺激するとして、むしろ避けられてさえきました。

 制度的にもその不備は認識されながら不十分なまま放置されてきました。原子炉立地審査指針は「必要に応じて公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること」として将来的に防災・避難計画の適切な策定が可能であることを求めながらも、立地審査の段階ではそれらの実現可能性を審査するしくみを備えてきませんでした。ただ曖昧に、県の責任だから、、といってごまかしてきたのです。

■3.11の教訓に応えるために
 その結果、日本のすべての原発において、防災・避難計画はないがしろにされてきました。福島の事故はその代償が決して小さくないことを私たちに突きつけています。現在、国が新たに指針を定めて各地の原発立地自治体とその周辺において防災・避難計画の見直しが進められています。つまり、これまでの防災・避難計画では不十分であったと国も認めているのです。

 この新しい基準で上関周辺を見た場合、祝島住民の避難はほぼ不可能であることが明らかです。このことからも、周辺住民の避難を考慮しないまま、原発が建つ土地の埋め立てを認めてしまったことは違法だといわざるを得ません。

 この裁判でいま問われていることは、安全を置き去りにしても既成事実を先行させてしまえば、なし崩しで原発ができてしまうという、これまでの日本の原発の根底にある問題なのです。今後同じ手口を許さないようくさびを打ち込むためにも、ぜひ全国から応援していただきたいと思います。

■原告には訴えの利益が確かに存在する
 さて、法廷では引き続いて「埋立免許無効確認訴訟」の方の弁論が行われました。こちらは、前回被告側から原告適格をめぐって「いちゃもん」が入ったので、それに対する反論が行われました。

 原告らは漁業権(許可漁業権、自由漁業権)、生存権、生活環境の利益、文化的・景観的利益、自然享有権などさまざまな権利を有しており、原発建設を前提に行われる埋め立てはそれらを侵害するものだ、よって原告らには裁判所に訴える権利がある、ということが主張されました。

 準備書面は提出することでその内容が法廷で述べられたことになることから、口頭での陳述を割愛することも多いのですが、それでは傍聴者にはまったく分かりません。しかし、若い小島弁護士が傍聴者にもよく分かる開かれた裁判にするためにと、口頭で丁寧に内容を陳述されていたのが印象的でした。

■これからの見通し
 公判後の報告集会において、籠橋弁護士は「こちらの論拠は非常に明確になった。これで主張は一応終えて、これから立証の段階に入っていきたい。現地検証や証人尋問も考えたい」と言われました。従来から取り組まれてきた「埋立免許取消訴訟」の方は、すでに骨格ができあがり、これから肉付けの作業が行われていくそうです。今後ともご注目よろしくお願いします。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

「自然の権利訴訟」第16回公判の報告


 去る4月10日(水)山口地裁にて第16回公判が開かれました。その内容をご報告させていただきます。

 前回までしばらくの間は、訴訟が終結するかもしれないという情勢の推移を見極めるため、法廷でのやり取りは休眠状態でした。しかし、今回から実質的な弁論が再会となります。

■二つの裁判の位置づけ
 少し整理しますが、この自然の権利訴訟は現在、後から追って提訴したものを含め二つの土俵で闘っています。法廷用語では平成20年第20号事件と、平成24年第13号事件と区別されているのですが、前者は県知事による埋立免許交付の手続きには重大な瑕疵があって無効だと主張するもの、後者は仮に有効であったと仮定してみてもその効力はすでに失われていると主張するものです。
 今回は第13号事件の方で原告側から、なぜ免許の効力が失われているのかということについて主張が行われました。

■失効の条件は法に明確に規定されている
 公有水面埋立法第34条は、期間内に埋立に関する「工事の著手」又は「工事の竣功」をしない場合には、免許はその効力を失うと規定しています。ご存知のように、これまでに行われたのは「ブイの設置」のみなので、これでは着手にはあたらず、まして竣功にもあたりません。よって期限を過ぎた今や免許の効力は失われているというのが原告の主張です。至極まっとうな考え方です。
 さて、この第34条には但し書きがあります。大目にみてあげてもいい何か特別な事情がある場合には、3ヶ月以内に限って免許の効力を復活させてあげるコトができるのというのです。中国電力に対して大目にみてあげてもいい事情があるかどうかはさておき、この救済策を適用するにしても、その期限である3ヶ月という期間はすでに過ぎてしまいました。この間、免許の復活のための手続きに該当する行為は何も行われていません。この点でも失効の事実は否定し難いといえます。
 漫画「北斗の拳」風にいえば、「免許はもう、死んでいる、、」のです。

■言い逃れの根拠を示せ
 これまでにも何度か紹介していますが、この間の被告代理人の主張は、期間満了を目前にして中国電力が免許の更新を申請し、県が受理しているので、「(処分はなくとも)免許はまだ有効である」というものです。内閣法制局がかつてそういった解釈を示す通達を出したことがあるというのがその根拠とされています(昭和28年3月18日法制局一発第26号「公有水面埋立免許の効力について」)。
 しかし、この点に関しても詳細を明らかにするよう原告側から求めました。すなわち、法のどの部分を解釈することでそのような理解が得られるのか、さらに、今回の件に関して同通達を援用することが適切なのか、まったく不明のままなのです。
 加えて、あとで高島さんから教えていただいたことですが、法廷から一歩外へ出て県議会の答弁では、県知事は通達の「つ」の字も口にしないそうです。そして、あとの取材の時にだけ記者に向かってこっそり通達のことを言うのだそうです。この辺もどうもあやしい、、何かヨコシマな下心があるように感じられます。本当に根拠のあることならば、議会の場でも堂々と通達のことを根拠として述べればいいはずです。
 いずれにせよ、「通達」は「法」を超えるものではなく、法に失効の条件が明確に示されている以上、それを曲げることはおかしいというのが原告の主張でした。

■入り口の話でゴネようとする被告
 さて一方で、被告代理人が主張したのはまったく別の話で、原告適格をめぐるものでした。埋立地の上に何が建つかは問題ではなく、埋め立てによって直接影響を受ける人に原告を限定すべきだというのです。
 しかし、この考え方は簡単に否定できると籠橋弁護士はいいます。というのは、アセスメントでは大気汚染の影響も調べるように義務づけられていて、そこから埋立地の上に建つものの影響をある程度は考慮しなければならないという暗黙の了解を導くことができるからだそうです。

■工事機材が撤収される!
 さて、報告集会において現地の動きとして少しうれしいお知らせがありました。それは、中国電力が田ノ浦の浜に展開していた埋立のための機材を撤収するというものです。同時にプレハブ小屋やガードマンの撤収の動きもあるそうです。
 もちろん、これは計画を完全に断念したということではなく、再開が見通せない中で資材を遊ばせておくムダを避けるためだけなのかもしれません。けれど、田ノ浦が少しでももとの姿に近づくことはたいへんよろこばしいことです。できれば、このまま計画を断念させることろまで、みんなの力で持っていきましょう。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

「自然の権利訴訟」第15回公判の報告


 去る2月15日(金)山口地裁にて第15回公判が開かれました。それ以前の流れにも少しさかのぼりながら、公判の内容をご報告させていただきます。

■勝利宣言のはずが、、
「今日はホントは勝利宣言のはずだったんだけど、、」
行きの電車で偶然お会いした籠橋弁護士が車窓の景色を眺めながら、ため息まじりにそう言われました。

 昨年10月6日をもって、山口県が中国電力に交付した埋立免許が期限を迎えることから、その効力は一旦失効してしまうハズでした。この裁判が目的としていた免許の「取り消し」が自動的に実現するため、訴えの利益が消失し、原告が訴えを取り下げるか、裁判所が訴えを棄却するか、いずれかの形で裁判は終結するハズだったのです。あとはどういう形で原告の主張の正当性をアピールしようかと、そのことだけに腐心してこの日を迎えたかったというのが私たちの本心でした。

■一転、闘いは継続へ
 しかし、自民党の復権によって風向きはガラリと変わってしまいました。ありえないとされていた新規立地計画は条件次第で復活するかもしれない可能性を残すことになったのです。

 中国電力はその変化を見越して、期限ぎりぎりの10月5日に免許の延長を申請し、申請が却下されるまでは法的に免許は失効しないと言い出しました。そして、それに呼応して、免許の延長は認めないとしていた山本知事も態度を一転、直ちに却下はせず、いたずらに判断を引き伸ばすという策に出たのです。政権によるゴーサインを待っているのは明らかです。

 しかし、さすがの自民党政権ですら再び新規立地を認めることには慎重になっています。こうして今も、免許が失効したことが確認されない中途半端な状況が続いています。

 今回、法廷においては双方とも新たな主張を行いませんでしたが、その代わり、訴訟は終結させず、今後も争い続けるということが確認されたのでした。

■山口県は速やかに申請を却下せよ
 山口県の姿勢に抗議するために、公判に引き続き、となりの林業会館において「抗議集会」が行われました。「自然の権利訴訟弁護団・原告団」と「埋立免許差し止め訴訟弁護団・原告団」の連名による抗議声明が発表されました。県はいたずらに判断を引き延ばすのを止め、ただちに申請を却下し、免許が失効したことを宣言するよう求めるものでした。
 
 祝島島民の会から山戸孝さんが「原発が本当に必要であるならば、姑息な方法によらずとも、もう一度免許の取得からやり直せばいいのであって、山口県が事業者に肩入れするような姿勢を続けるのはおかしい」と訴えられました。まったくその通りだと思います。

■問われる山口県の主体性
 引き続き報告集会が行われました。印象深かった点を紹介させていただきます。各地で原発をめぐる裁判はたくさん取り組まれていますが、埋立免許という早い段階を問題にしている裁判はほとんどありません。ここにこの裁判の重要な意義があります。

 これまで「安全審査はいずれ国によってなされるから」という理由で自治体による安全審査は行われずに埋立免許が交付されてきました。そうして埋め立てが進み、既成事実が先行してから安全審査が行われるのが通例でした。

 しかし、既成事実ができ上がっている段階で厳格な安全基準を適用することは困難です。実際のところは、現状にあわせて基準の方のつじつまをあわせるという本末転倒がまかり通ってきました。これが本来適地などほとんど存在しないはずの日本において、これほど多くの原発が林立している背景をなしています。

 この裁判は、そういった既成事実先行のやり方を根底から問い直し、自治体が責任をもって主体性を発揮することで、そういった構造の歯止めになり得たし、これからもなり得るのではないかということを訴える意味があるというのです。今後とも、改めまして、ご注目をよろしくお願いします。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

「自然の権利訴訟」第14回公判の報告


 昨年の暮れ12月5日(水)山口地裁にて第14回公判が開かれました。

 前回、埋立免許の期限切れが迫る中、黙り(だんまり)を決め込む県側のようすを指して‥
「隙あらば計画を復活したいと願っている原子力村のゾンビたちが、いかにして今後の可能性を残そうかと水面下でもがいている気配を感じさせました。」
と、報告させていただきましたが、今回はその印象が確信にかわると当時に、その具体的な作戦を垣間みることができました。

 法廷での実質的なやり取りは、事態が進展いていないため、ほとんど行われず、舞台はすぐに別室での「進行協議」に移りました。これは、訴訟の進め方をどうするかを当事者間で話し合うもので、傍聴者は入ることができないのですが、私は原告の一人として立ち会うことがことができました。

■「免許はまだ失効していない」という見解
 そこで県側が言ったことに少し驚き、また、なるほどそれが作戦か‥とも思いました。被告代理人はなんと「免許はまだ失効していない!」というのです。

 つまり、免許の失効を目前にして中国電力は免許の更新を申請したのだそうです。そして、県はいまだそれに対して却下とも認めるとも判断を下していなくて、そういった状態においては、以前の判断が生き続けるというのが内閣法制局の認めるところの「慣例」なのだそうです。

 ただし、この慣例は本来、立場の弱い人が行政の手続きの緩慢さの中で、その権利を不当に失うことのないようにとの配慮から認められていることのようで、今回のように力あるものの横暴を助長するような使われ方は、問題にしていかなければなりません。

■政策の変更を待つ姑息な引き延ばし
 それはさておき、進行協議はこれまでの流れから基本的に埋立免許が失効するであろうことを前提に、この訴訟をどう終結するかを話し合う予定だったので、県が半ば応じないという姿勢であるため、結論は先送りということになりました。

 報告集会にて赤津弁護士は「延長みたいで、せっかく来てくださったみなさんには申し訳ない」とおっしゃってましたが、悪いのはひとえに姑息な引き延ばしを図ろうとする県側です。免許を一旦失効させてしまうと改めて交付する際のハードルが高くなるかもしれないことを見込んでいるのです。

■自民党が再び政権の座に
 さて、この報告を執筆している現在、被告の思惑通りといっていいでしょう、衆院選を経て再び自民党が政権の座に着いてしまいました。一旦はついえたかに思えた上関原発の新規立地計画は、忌々しいことですが、存続の可能性を残したのです。

 しかし、自民党の圧勝は民主党への失望と小選挙区制のからくりの中で起こった現象であって、必ずしも分厚い支持によるものではありません。脱原発を望む世論そのものも特に大きく後退したわけではありません。当の自民党自身がそのことは分かっていて、今は猫をかぶっています。いつまでも猫のままでいてもらうために、歯止めとなる民意を示し続けなければなりません。

■まだ気の抜けない局面が続きそう
 細かな補足ですが、前回、原告から二つの申し立てが出されていました。ひとつはこの裁判の審理に中国電力も当事者として参加させるよう要請するもの、もうひとつは、埋立免許は既に事実上失効してしまっているのではないかということの確認を求めるものでした。それに対して今回、被告はいずれも却下するようにとの主張を書面にて行っています。

 一方、報告集会では長島の自然を守る会の高島さんより心強い報告もありました。守る会が上関原発予定地周辺で確認してきた希少な貝類17種が絶滅の危惧される種としてレッドダータブックに加えられることになったそうです。環境省によるお墨付きが得られたことで、この地の自然を守ってという主張は、これまで以上に無視できないものとなるはずです。今後も多くのみなさんの応援をよろしくお願いします。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)