2010年3月4日木曜日

自然の権利訴訟 訴状

訴状

山口地方裁判所  御中

           平成20年12月2日  
               原告ら代理人
弁護士  籠橋隆明
弁護士  吉江仁子
弁護士  西川研一
弁護士  小島智史
弁護士  赤津加奈美
弁護士  只野 靖
弁護士  泉 武臣
当 事 者 の 表 示
1. 原告
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    スナメリ 
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    カンムリウミスズメ 
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    ナメクジウオ 
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    ヤシマイシン近似種 
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    ナガシマツボ 
  山口県熊毛郡上関町大字長島地先、田ノ浦湾
        原告    スギモク
  山口県防府市仁井令町20-11-B101
        原告    長島の自然を守る会 
                右代表者
                高島美登里 
  山口県熊毛郡上関町大字祝島218番地
        原告    上関原発を建てさせない祝島島民の会 
                右代表者代表運営委員
                山戸貞夫 

その余の原告、別紙当事者目録記載のとおり

2. 原告ら代理人
  〒 453-0051
    名古屋市中村区椿町15番19号 大和生命ビル2階
    T.052-459-1750 F.052-459-1751
        原告代理人
        弁護士    籠橋隆明 (主任)
        弁護士    吉江仁子 
        弁護士    西川研一 
        弁護士    小島智史 

  〒 530-0047
    大阪府大阪市北区西天満2-6-8 堂島ビルヂング618
    弁護士法人赤津法律事務所
        弁護士    赤津加奈美 
  〒 160-0022
    東京都新宿区新宿1-15-9 さわだビル5階
    東京共同法律事務所
        弁護士    只野 靖 
  〒 812-0044
    福岡県福岡市博多区千代4-31-7 九県前ビル3階
    九州合同法律事務所
        弁護士    泉 武臣 

3. 被告
    〒753-8501
    山口県山口市滝町1番1号
        被  告   山口県知事  二井関成

公有水面埋立免許処分差止請求事件

 訴訟物の価格   金1、600、000円
 貼用印紙額    金   13、000円
 予納郵券額    金   10、000円
請  求  の  趣  旨

1 被告山口県知事が平成20年10月22日に中国電力株式会社に対して行った公有水面埋立法第2条第1項に基づく、山口県熊毛郡上関町大字長島地先の公有水面埋立て事業の免許(指令平20港湾第442号)はこれを取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。


請  求  の  原  因
第1 「自然の権利」訴訟
  本件は長島の自然を守る「自然の権利」訴訟である。

1. 「自然の権利」においては自然は当然に価値があると考える。地球上の全ての生物、非生物は相互に密接に関連しており、人間とて例外ではない。現実に、人間は自然より物質的、文化的、生物学的な資産を得てきたし、今後も必要とする。最近の研究によれば人類の文明史は自然環境と人間社会との相互関係に密接にかかわっていることが証明されつつある。「人類の歴史も根本の部分は生態学的法則に握られている。」といっても過言ではない。そもそも人も自然の一部であり、進化の過程で出現してきたことを考えれば、人と自然との結びつきは人が人であるための当然の前提であり、人の価値を認めるのであれば当然それに連なる自然にも価値があるとしなければならないのである。こうした、関係性の系として自然のあり方を考えれば自然は生態系として保全、保護されなければならないことは明らかである。

2. ところで、現在社会では人類は地球という惑星全体に大きな影響力を与えるまでになっている。人間の影響により多くの野生生物種が絶滅しつつあり、「人類が、自然の損耗をはるかに上回る速度で、そして自然のプロセスによって新しいもので置きかえられるよりずっと早い速度で、生物種の個体群を絶滅に追いやりつつあるということが明らかになりつつある。」種の絶滅が人類にとって深刻な影響をもたらすことは今日では国際的な共通認識となっている。このような現象は我が国では特に深刻である。多くの里山や海岸が破壊され、メダカなどの普通と思われていた野生生物が絶滅の危機に瀕している事実を目の当たりにするとき、我々は危機の深刻さに驚かざるを得ない。

3. 自然が自らの保護を訴えることはあり得ない。自然の価値は代弁されることによって初めて保護される。「自然の権利」とは人が自然の価値を代弁することを言う。それは人の防衛行為であり、自然の利益を享受したいという人の権利行使でもある。それは自然保護政策にかかわる民主主義的な参加の利益でもある。以上から、「自然の権利」とは、人が自然生態系の立場に立って、自然の価値を代弁することが必要であり、そのような人の権利があると主張するのである。本件では野生生物が原告として表示されているが、野生生物は長島の豊かな自然生態系の象徴であり、別紙1及び2の原告らが野生生物を代弁して「自然の権利」を行使している関係を示しているものである。

第2 当事者
1. 自然物たる原告
 ① スナメリ(Neophocaena phocaenoides)
   スナメリ(砂滑)は、クジラ目ハクジラ亜目ネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカである。生息域の北限は日本の海域である。スナメリは水産資源保護法では保護動物に指定され保護されている。
 ② ナメクジウオ(Branchiostoma belcher)
   ナメクジウオは、脊椎動物に最も近縁な動物群(脊索動物門頭索動物亜門)に分類される脊索動物である。脊椎動物の最も原始的な祖先であると考えられ、生きた化石として知られている。
 ③ カンムリウミスズメ(Synthliboramphus wumizusume)
   カンムリウミスズメ(冠海雀)とはチドリ目・ウミスズメ科に分類される鳥類の1種である。体長は25cmほど。夏羽では頭と喉、腹が白く、他は黒い。名のとおり頭に黒い冠羽がある。冬羽になると冠羽がなくなり頭も黒くなって、近縁種のウミスズメに似る。国の天然記念物で環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)である。
 ④ ヤシマイシン近似種(Tomura sp.)
   本件開発区域にはカクメイ科の貝であるヤシマイシン近似種が生息する。これは腹足綱(巻貝類)の進化において非常に重要な貝類であり、世界的にも貴重な種となっている。
 ⑤ ナガシマツボ(Ceratia nagashima)
   本件開発区域にはワカウラツボ科の貝であるナガシマツボが生息する。ナガシマツボはその学名、和名が示すように上関町長島の四代田ノ浦をタイプ産地(新種記載に用いられたホロタイプ標本の産地)とする種で、長島をタイプ産地とする唯一の生物である。これまで、長島以外からの発見例はない。
 ⑥ スギモク(Coccophora langsdorfii)
   スギモクはホンダワラ科の杉の葉に似た海藻で、主に日本海側に分布する。瀬戸内海での発見は数例で、分布南限域にあたる。

2. 別紙目録の原告ら
1) 別紙目録1の原告
  原告らは祝島島民である。
2) 全原告について(別紙目録1及び同2の原告)
  原告らは別紙物件目録の事業によって、本件事業区域の自然の利益を享受し、観察し、保全・保護活動している者である。また、本件原子力発電所が事故を起こした場合には放射能などにより深刻な被害を受けうる地位にある者である。
3) 原告長島の自然を守る会は山口県防府市仁井令町20-11-B101に事務所を置き、長島の自然環境・生態系の保全・保護を目的に下記の活動を行っている。
 ① 長島の自然環境・生態系を明らかにするための研究・調査活動
 ② 長島の自然環境・生態系を保全・保護する社会的活動
 ③ 長島の自然環境・生態系を保全・保護する普及・宣伝活動
 ④  その他、上記目的に添うあらゆる活動を行う。
  この会は総会を最高意思決定機関とし、代表、副代表、事務局長、事務局次長、幹事、会計監査からなる役員が日常業務の意思決定を行う。代表は会を代表し、組織を統轄する。
4) 原告上関原発を建てさせない祝島島民の会は住所地に事務所を置く、権利能力無社団である。同団体は上関原発に反対し、祝島の自然と文化を守るために結成された。

3. 被告
  被告は山口県における、公有水面埋立法上の公有水面埋立免許権限(法2条1項)を有する者である。

第3 本件事業等
1. 本件事業は次の通りである。
事業者 中国電力株式会社
名称 上関原子力発電所
設置場所 山口県熊毛郡上関町大字長島及びその地先公有水面部
用地面積 約160万平方メートル
敷地(整地)面積 約33万平方メートル
冷却水量 毎秒190立方メートル(2基運転時)
取水方式 深層取水
放水方式 水中放水
営業運転開始時期
【1号機】平成26年度(予定)
【2号機】平成29年度(予定)
  
2. 本件免許
1) 本件事業に伴う公有水面埋立区域について、中国電力株式会社(以下「中国電力」という)は平成20年6月17日付けで被告山口県知事に対し、公有水面埋立免許願書を提出した(以下埋立免許のことを本件埋立免許という)。
2) 被告知事は平成20年10月22日に本件事業に伴う公有水面埋立について、公有水面埋立法第2条第1項、同法13条に基づき免許した(指令平20港第442号)。

第4 本件予定地など 
1. 本件発電所の建設予定地は、山口県の南東部にあたる山口県熊毛郡上関町大字長島の最西端に位置し、瀬戸内海に面している。
  本件発電所敷地は、発電所本館などの本体設備、取放水設備、開閉所等の発電設備ならびに管理事務所、倉庫、貯水槽などの付帯設備および取付道路等の設置に必要な範囲を確保する計画としている。
  その発電所の敷地面積は、約137万平方メートルである。

2. 瀬戸内の特性
1) 瀬戸内の構造
  瀬戸内海は公有水面2万3203km3 平均水深38mの我が国最大の内海であり、その多くが瀬戸内国立公園に指定されている。沿岸部には大小の瀬戸、湾、岩礁があり、1000余りの島嶼を含んでいる。各海岸、島々の間には「灘」と呼ばれる広大な浅瀬が広がっている。両端が開かれているとはいえ、瀬戸内海は閉鎖系水域であり、しかも潮流が早い特徴を持っている。また、内海であるため太平洋の荒波を受けることもない。このような瀬戸内海特有の構造に応じて、独自の生態系、独自の文化が発展してきた。
2) 瀬戸内の生態系の特性
  内湾域(半閉鎖水域)は、一般に、生物生産力が高い場所であるが、瀬戸内海は、日本の沿岸海域中、最大の生物生産力を有する海域である(青山、 1977)。伝統的に主なタンパク源を魚介類に依存してきた日本人にとって、瀬戸内海は、天然の「食料庫」として特に重要であった。また、その高い生物生産力によって水域の富栄養化物質が除去される「水質浄化作用」の場としても重要な役割を果たしている。
  加藤真(京都大学大学院)によると、ナメクジウオ、イカナゴ、マダイ、アビ類、スナメリが形作る食物連鎖が瀬戸内海の生態系の特徴であるという。上記のように瀬戸内海は灘と呼ばれる広がりと瀬戸と呼ばれる潮通しの良い海峡部が複雑に入り交じり、多様性の高い環境を作りだしている。
  潮通しのよい瀬戸部の周辺には砂が堆積し、アマモなどの多くの藻場が干潟と連続していた。ナメクジウオは砂地の生物の典型であり、イカナゴは砂地や藻場と密接に関連した魚である。イカナゴはマダイなどの大型魚類や、アビなどの海鳥、スナメリなどの海洋ほ乳類の餌となっている。瀬戸内の漁師はアビ類、スナメリを目印に漁業を営み、マダイなどをねらっていた。こうした「灘」と「瀬戸」が織りなす生態系が瀬戸内の生態系である。
3) 瀬戸内の文化的特性
  魏志倭人伝の記述や記紀の記述を引くまでもなく瀬戸内は古来より畿内と九州地方、さらには朝鮮半島、中国とを結ぶ海上交通路であり、我が国の文化的形成に重要な役割を果たしたことは論を待たない。
  また、多数の島嶼からなる風景は、「わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地」(瀬戸内海環境保全特別措置法3条)とされ、多くの文化、芸術の対象ともなってきた。瀬戸内海国立公園は、昭和9年に雲仙や霧島とともに我が国で最初に国立公園の一つとして指定された。

3. 瀬戸内海における環境破壊
1) 瀬戸内海沿岸部には多くの工業地帯を抱え、工業、人工の負荷は瀬戸内の自然を瀕死の状態に追いつめてきた。自然海岸は人工海岸にかわり、内海の水質は著しく悪化してきた。こうした事態を受けて、瀬戸内海環境保全特別措置法は瀬戸内海のすぐれた自然環境が「国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ」制定された。
2) しかし、瀬戸内海環境保全臨時措置法施行(昭和48年11月2日)後、平成9年11月1日までの間に4、131件、総面積10、592haの埋立が免許または承認されており、瀬戸内海海岸部の人工化は進んでいる。
  生物相の貧困化も同様に深刻である。広島県三原市幸崎町有龍島はナメクジウオ生息地として、呉市豊島・斎島近海はアビ渡来群游海面として、竹原市高崎町はスナメリの回游海面としてそれぞれ国の天然記念物とされているが、今ではこれらの生物の姿はここではほとんど見られなくなっている。
  そのような状況下で、本件当該地域である瀬戸内海西部(周防灘)は、今に至るまで、本来の豊かな内湾環境を最もよく保持している。日本の他の海域で姿を消した「絶滅危惧種」(小さな貝類やナメクジウオのような生物から、スナメリのような海生哺乳類まで)が、この海域で多数見つかっているのは、そのことをよく表している。

4. 本件開発区域の特徴
1) 本件開発区域は室津半島先端部にある長島最西端、田ノ浦に位置する。三方の海は周防灘、伊予灘に接しており、長島西側には祝島が浮かんでいる。海岸、海底のほとんどは礫と砂で構成されており、沖合に向かって緩やかに傾斜している。海岸の人工化は進んでおらず、瀬戸内の原風景を維持した景観となっている。開発区域は瀬戸内海国立公園の一部であり、周辺部も大部分は普通地域となっているが、第2種特別地域が存在する。
2) 田ノ浦は、小さな湾に面した、波当たりのおだやかな浜で、その潮間帯には、この地域に固有の種を含む非常に特徴的で多様な生物群集が見られる(福田2001)。田ノ浦にはまた、瀬戸内海沿岸では極めて少なくなってしまった手つかずの海岸植生が残されている(安渓・野間 2001)。浜の中央部にコンクリートの堤防が建設されてはいるものの、その堤防の両側には磯から砂浜・礫浜を経て照葉樹林に至る自然のままの連続した海岸植生帯が残されている。一方で、田ノ浦周辺の森林のほとんどは二次林であり、それは、薪を採るために地域住民が長い間利用してきたことで成立したものである。海中のみでなく陸上においても、自然の恵みを住民が享受する関係が持続していた。このことは、四代地区共有地や四代八幡宮所有地をめぐる訴訟の審理でも明らかにされた。
3) この海域には、ガラモ(ホンダワラ類)が茂る磯があり、ナメクジウオやイカナゴが生息する浅瀬の砂地があり、アビ類が飛来し、スナメリが繁殖している。また、岩礁地帯にはタイドプールが点在し、生きた化石といわれる腕足類カサシャミセンや原始的な巻貝ヤシマイシン近似種が生息している。ヤシマイシン近似種が属するカクメイ科の巻貝は、本件海域近郊の島々に見つかっているが、どの島でも固有の種がいると考えられており、本海域のヤシマイシン近似種はこのタイドプールでしか見つかっていない貴重なものである。本件地域は瀬戸内の代表的自然生態系が残されている地域となっている。
4) 豊かな自然を残した長島周辺は、豊かな文化を残している区域でもある。
  祝島は、波高い周防灘の東端に位置するため、古来行き交う船の航行安全を守る神霊の鎮まり給う島として崇められてきた。このことは都にも広く知られていて万葉集にも登場する。
    草枕旅行く人を
    いはひ島
    幾代経るまで斎ひ(いわい)来にけむ   (万葉集 三六三七)
  祝島の「祝」という語は古代以来の神職の名称の一つ、”ほうり”に由来するとも言われ、祝部とも称した。その祝部のいる島が、祝島と呼ばれるようになったとも言われる。祝島から姫島、国東への航路が先史・古代における畿内から九州へ渡る主要な、かつ最短コースであって祝島はその最後の中継的寄港地であり、航海の平安を祈る為の島であったと思われる。
  このように文化的にも本件区域は瀬戸内を象徴する区域なのである。

第5 本件の経緯
1. 本件の経緯
1) 昭和63年9月に上関町は、中国電力に対し、本件上関原子力発電所の誘致を申し入れた。その後、中国電力により立地環境調査などが実施されるとともに、関係漁協などとの協議が始まった。
2) 平成12年4月には中国電力は四代漁協・上関漁協・共第107号共同漁業権管理委員会と漁業補償契約を締結した。
3) 平成13年6月には経済産業大臣は、上関1、2号機を組み入れた電源開発基本計画を決定した。
4) 同月中国電力は環境影響評価書を経済産業大臣に届出し、平成13年7月 経済産業大臣は中国電力に対し、環境影響評価書について、変更の必要がない旨を通知した。
5) 平成16年10月には四代八幡宮所有地の売買契約を締結し、発電所敷地造成区域内の土地売買契約を終了した。
6) この土地については売買契約の有効性をめぐって係争中である。
7) 平成16年11月 ボーリング調査など詳細調査計画を取りまとめ山口県、上関町に計画を説明、平成17年4月 詳細調査(陸上ボーリング)を開始した。
8) 平成20年6月17日付けで被告山口県知事に対し、本件公有水面埋立免許願書を提出した。
9) 被告県知事は平成20年月7月15日には、「公有水面埋立免許願書」の縦覧を始めた。

2. 詳細調査
1) 中国電力は現在、「原子炉設置許可」の申請に必要なデータを得るために上関原子力発電所(1、2号機)建設に伴う詳細調査を実施している。詳細調査は陸域、海域の2つの区域に分かれて実施されている。「原子炉設置許可」を得るために必要な調査であるから、調査の結果によっては設置許可が得られないこともあり得るものである。
2) 詳細調査では、海域、陸域とも、現在、ボーリング調査などが実施されている最中であり、終了していない。詳細調査中最も重要なものはボーリング調査であるが、ボーリング調査ではボーリング機械により地盤を構成する岩石などを棒状のコアとして連続的に採取し、これを観察するとともに種々の試験を行うというもので、自然環境に与える悪影響も大きい。

3. 本件環境影響評価手続きの経緯
1) 本件開発に先立ち平成7年4月ころから環境影響評価調査が実施され、平成13年7月には上関原子力発電所(1、2号機)環境影響調査書」が作成された。
2) 同評価書を中国電力は平成11年4月に通産大臣に提出したが、これは、大型事業でありながら環境影響評価法施行前に作成されたものである。そのため同法の定める「方法書」の作成がなかった。「方法書」は、対象事業に係る環境影響評価(調査、予測、評価)をおこなう方法の案について、環境の保全の見地からの意見を求めるために作成する文書である。その手続きを欠いたため、「生物多様性を有する豊かな自然環境の地であることから、環境の科学的な把握と保全に万全を期すこと」という山口県知事意見が出され、新法の観点にたつ追加調査が必須であるとする環境庁長官意見、通産大臣勧告が出された。
3) これらを受けて、中国電力は、平成12年1月から10月をめどとして追加調査を実施した。その調査方法は「これまでに実施した調査法と同一」とされており、上記の希少生物の保全に役立つ追加調査にはならないことが強く危惧されていた。
4) 平成12年10月18日、中国電力は「上関原子力発電所(1、 2号機)に係る環境影響調査中間報告」を通商産業省に提出した。
5) 通産省は環境審査顧問会・原子力部会を同年11月9日に開催し、その内容を了承した。さらに山口県知事は、平成13年1月29日付けでこの中間報告書においては、「平成11年11月25日付けの知事意見は、基本的に尊重されている」との見解を経済産業省資源エネルギー庁あて送付した。
6) 平成13年7月17日から平成13年8月16日にかけて評価書は縦覧され、環境影響評価手続きは終了している。

第6 自然保護についての基本的考え方
1. 公共的信託
  公有水面は自然公物としてひろく公衆の用に供せられるべきものである。民主主義下にあっては、政府は自然公物の管理を国民から委託されたものと考えるべきである。自然物は自然のままで利用、保全されることがその最有効利用とされるべきで、原則として改変は許されないと考えるべきである。それは、自然自体が長い進化の歴史や人類の歴史的過程で形成されてきたものであり、ひとたび破壊されればその回復は容易ではないという経験則に基づいている。自然や文化は本来次世代に引き継ぎ、持続的に利用されることこそが自然公物の管理者に求められることであって、一時の利益のために破壊、消費することは許されない。
  世界人口が急速に増加している現在、食糧を安定に供給してくれる生態系の保全は、人類の生存のために何よりも重要である。海の生態系によってもたらされる水産資源(魚介類)は、人類にとって最も重要なタンパク源の一つであるが、近年、世界的に枯渇しつつある。日本では、近年の資源減少に伴う沿岸漁業の衰退が著しく、過去40年間に魚介類の自給率は大きく低下した(供給熱量ベースで、1965年の110%から2005年の57%へ)。長期的な視点から日本の食料庫を守るという意味において、内湾環境の保全とそこでの漁業の復興は極めて重要である。とりわけ、現時点で生態系がよく保存されている瀬戸内海周防灘は、本来、徹底した環境保全策がとられるべき場所である。

2. 予防原則
1) 生物の多様性と予防原則
  また、自然生態系自体、科学的に解明されておらず、いかなる人為的影響がいかに自然生態系に対して影響を及ぼすか、ひいては人の生活にどのような影響を及ぼすかについては未解明部分が余りにも多い。こうした自然生態系に対する科学的態度からすれば、人為的影響は抑制的であるべきである。このような対応は予防原則として広く国際的に承認された原則であり、我が国の自然保護政策の原則でもある。こうした、予防原則からすれば、自然環境は原則として、改変を許さず、自然は自然のままで利用することこそが、人にとって最良の利用であり、管理であると考えるべきである。
2) 原子力発電と予防原則
  従来の日本の原子力発電所は、すべて、外洋的環境に立地しているが、今回の計画は、初めて、内湾奥部に立地するものである。内湾の沿岸域は、多くの水生生物種の産卵、保育の場所としてとりわけ重要であり、しかも、当該海域は、瀬戸内海という本来日本最大の生物生産力を有する内湾である。
  本件の原子力発電所の計画は、現時点で生態系がよく保存されている瀬戸内海周防灘の「心臓部」を埋め立て、恒常的に海水を取水排水することによって海洋生態系に大打撃を与える可能性がある(詳細は後述)。また、当該海域が半閉鎖海域であるために、事故発生の折には、たとえそれが小規模なものであっても、放射能汚染が滞留しやすく、それによって、漁業がほぼ永久に壊滅する恐れがある(風評被害なども起こりやすい)。
  このようにあまりにも大きなリスクが存在する場合には、「予防の原則」に則って、当該の開発計画を見直すべきである。一般に、自然の生態系については科学的に未解明の部分が多いため、開発に伴う悪影響の程度を事前に正確に予測することは難しい。したがって、大きなリスクが存在する場合には、災禍を未然に防ぐことを優先し、開発によって「起こりうる」最悪の事態を想定し、対処を考えるというのが、「予防の原則」である。それは、今日の様々な環境問題に対する国際的な基本原則である。

3. 生物の多様性についての考え方
1) 生物多様性条約
  我が国は生物多様性条約に加盟している。生物多様性条約はその前文で「締約国は、生物の多様性が有する内在的な価値並びに生物の多様性及びその構成要素が有する生態学上、遺伝上、社会上、経済上、科学上、教育上、文化上、レクリエーション上及び芸術上の価値を意識し、生物の多様性が進化及び生物圏における生命保持の機構の維持のため重要であることを意識し、生物の多様性の保全が人類の共通の関心事であることを確認し」、と定め生物の多様性が急激な勢いで減少していることを憂慮して締結された。
2) 生物多様性基本法
  この条約を受けて、我が国では生物多様性基本法が制定され、「人類共通の財産である生物の多様性を確保し、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、次の世代に引き継いでいく責務を有する。」という認識に立っている。
  この法律における保全・保護政策の基本的考えは「持続性」であり、そのために予防原則の立場に立っている。同法3条では「生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法」を「行われなければならない。」と定める。

第7 本件免許の違法性
1. 公有水面埋立法4条1項1号違反
1) 法4条1項1号は「国土利用上適正且合理的ナルコト」を求めている。
  2007年7月16日新潟県中越沖地震が発生し、東京電力柏崎刈羽原子力発電所が甚大な被害を受けた。柏崎刈羽原子力発電所3号機タービン建屋外部の変圧器において火災が発生し、2時間近くも燃え続けた。さらに原子力発電所敷地が波打ち、1m以上の段差が出来ているところもあること等々、被害の箇所が次々と明らかになっていった。
  その後、各号機の原子炉建屋最下階で計測された水平方向並びに垂直方向の最大加速度が、設計時の加速度値を殆どの号機で超えていること、その中でも1号機では東西方向で設計時の加速度を407ガルも超え、6号機では上下方向で253ガルも設計時の加速度を超えていることが公表され、設計時に想定した地震動が不十分であったことが現実の地震動によってあきらかにされた。
  中越沖地震の地震規模はそれ程大きくはないのに、解放基盤表面で想定しえなかった巨大な加速度を発生させ、原子力施設には甚大な被害が発生していること、東京電力が活断層の発見、評価を誤り、また、耐震設計審査指針において、一次チェックをした旧通産省、最終チェックをした原子力安全委員会もその誤りを是正することができずに設置許可処分がなされたこと等、原子力発電所の耐震安全性の確保に関する大きな問題明らかになった。
2) 2001年4月の山口県知事意見においても、「原子力発電所の耐震安全対策について、計画地点が「特定観測地域」にあり、先月末には「平成13年(2001年)芸予地震」が発生し、耐震性について懸念する意見が高まっていることを踏まえ、事業者に入念な活断層等の事前調査を行うよう指導を徹底するとともに、今後想定される地震に対応できる最新の科学的知見を反映した厳格な審査を行うこと。」を「今後の対応状況等によっては、当該計画の推進等について、県が有する権限、事務、協力等を留保することもあり得る」条件として求めている。
3) このような事情を考慮すれば、2007年7月新潟県中越沖地震を前提に原子力発電所の必要性が検討されなければならない。しかるに今回、中国電力が依拠している環境影響評価書は、2001年6月に提出されたものであるなど、こうした事情を考慮しておらず、失当である。
  したがって、本件願書に基づく埋立が「国土利用上適正且合理的なること」であるとは到底言えないのである。

2. 法4条1項同項4号違反
1) 法4号1項4号は「埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト」を求めている。
  新潟県中越沖地震によって、想定外の被害が生じたのは電力会社が、あくまで設置許可を得るために、断層の規模や活動性の評価について過小評価し続けてきたことは否定できない。また地震動評価の過程においても過小評価が繰り返されてきた。そして、変動地形に基づく断層地形の判読や地盤による揺れの増幅などの科学的知見も無視されてきた。
  他方、審査をする国側では、国策として原発を建設することを前提としているため、審査にあたっては、専門家の人選も偏向しており、専門的知見を真摯に受け入れることを怠っており、加えて委員である専門家にも中立性・客観性の自覚に欠ける者が存在し、適正な審査がなされなかったことが明らかである。
  これらのことからすれば、現状の原子力発電所の設置許可制度そのものに問題があり、公有水面埋立法が求めている本件公共施設たる原子力発電所の配置、規模が適正に審査されていると言い難い。
2) 中国電力は現在、「原子炉設置許可」の申請に必要なデータを得るために上関原子力発電所(1、2号機)建設に伴う詳細調査を実施している。その最も重要な調査がボーリング調査であるが、現時点ではそれが完了していない。ボーリング調査ではボーリング機械により地盤の調査に関わるものであり、その結果によって施設の配置、規模が変化することが予想される。
  新潟県中越沖地震によって、東京電力を始めとした関係機関の想定外の被害が生じたのは既に述べたとおりである。本件詳細調査についてもこうした想定外の事態を受けてさらに調査方法そのものも根本的に考える必要がある。
  現状では公有水面埋立法が求める公共施設たる原子力発電所の配置、規模が適正に審査できる状況にないにもかわらず認められた本件免許処分は法4条1項4号に違反する。

3. 法4条1項3号違反
1) 環境影響評価手続きの欠如、不備等
 (ア) 法4条1項3号は「埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト 」とし、免許に先立って環境保全措置が講じられていることが求められる。そのための環境影響評価手続きは不可欠である。
   ところで、本件は用地面積約160万㎡という大規模な開発行為であるが、環境影響評価法に基づく環境影響評価手続きが実施されていない。中国電力は環境影響評価法施行前として本来の手続きによらない環境影響評価を行っているが、多くの問題点が存在し、本件免許は法4条1項3号に違反する。
 (イ) 祝島調査について
   山口県熊毛郡上関町祝島は祝島と小祝島からなる小島であり、島内の人口は530人ほどである。祝島は、波高い周防灘の東端に位置する周囲12キロの孤島で、古来行き交う船の航行安全を守る神霊の鎮まり給う島として崇められてきた。
   本件原発建設予定地は祝島の対岸であり、海を隔ててわずか4キロしか離れていない。仮に本件原発に放射能漏れなどの事故が発生すれば祝島は最も深刻な影響を受ける地域となる。祝島住民にとっても豊かな自然環境は漁業、観光など祝島の最も重要な資源となっている。しかるに、本件環境影響評価手続きにおいては祝島が調査されていない。
 (ウ) 海域の埋め立てによる自然破壊
   海域の中で、生態学的に最も重要な部分(生物生産を大きく支える部分)は、一番浅い部分(すなわち、潮間帯および潮下帯)である。当該計画によって埋立てられるのは、まさにその潮間帯および潮下帯であり、もし計画が実行されれば、多くの絶滅危惧種の生息場所の相当部分が永久に失われる。また、当該地では、陸の山林に浸透した淡水(雨水)が地下水・伏流水となり、海底から湧出していることがわかっている。これによって陸のミネラルが海域に供給され、生産力が高まっている可能性が高い。当該計画による陸域の開発(山林伐採、土地の掘削)と海岸部の埋立てによって、この地下水・伏流水の供給システムが半永久的に断ち切られ、周辺海域の生態系が広範囲に悪影響を受ける可能性がある。これらの点が、本件環境影響評価手続きにおいて、全く評価されていない。
 (エ) 野生生物に対する影響評価
  ① 環境影響評価書には影響評価の基礎となるべき、動植物のリストが(陸産貝類を除き)脱落しているばかりか、あらゆる項目において、不十分な検討のまま「温排水や海域埋め立てが各種生物に及ぼす影響が小さい」という趣旨の性急な結論が下されている。
  ② 貴重な生物種の生息場所及び近傍の環境の改変がそれらの絶滅リスクをどれほど変化させるかなどの定量的な予測がない。そのため、評価書の随所に見られる「影響は少ないものと考えている」などの記述は科学的とは言えない。
  ③ この海域が単なるスナメリの回遊域ではなく、瀬戸内海に残されている唯一のスナメリの繁殖地である可能性を見落としている。そのため、開発のこれら生物への影響が余りにも過小に評価されている。
  ④ カクメイ科については、科レベルでの調査があるのみで、影響評価の前提である種の同定さえ行われていない。底生生物についても既知の希少種の記載すらない。リストのある陸産貝類の種の同定には明らかな誤りがある。
 (オ) 冷却水の取水排水に伴う恒常的な生態系破壊
  ① 本件の原子力発電所が運転を開始した場合、毎日、莫大な量の海水が、冷却水として取水され、それが温排水として排出される。その海水量は、1ヶ月間で、平均水深50mの海域の1km(沖合) ×10km(海岸線)の全ての海水を取水するほど厖大である。
  ② 当該海域からは、80種もの魚種の稚仔、43種の魚種の卵、および93種の動物プランクトン(甲殻類や二枚貝などの底生動物の幼生も多数含まれる)が確認されている。それらは、どれも微小で、海水中に浮遊しているので、原子力発電所の冷却水の取水に伴って、毎日、莫大な量の海水と一緒に発電所に取り込まれ、それらは、配管内部で急激な水温上昇と生物付着阻止薬剤(次亜塩素酸ソーダ)にさらされる。
    これによって、毎日、莫大な量の魚の稚仔、魚の卵、およびゴカイ類やエビカニ類やウニ類、アワビやサザエなどお水産有用種を含む貝類の幼生が殺される(次亜塩素酸ソーダは、まさに水生生物が復水器等に付着しないよう、それらの幼生プランクトンを殺す目的で使用される。多くの魚介類の産卵、保育の場所として重要な内湾域でこのようなものを作れば、当該海域での漁業や生物多様性に壊滅的な打撃を与えることは明らかである。殺生物剤はカキの幼生にきわめて強い毒性があることが知られており、周辺海域のカキ養殖にも影響がでると考えられる。しかし、環境影響評価書では、この点が全く検討されていない。
  ③ さらに温排水は周囲の海水よりも最大7℃上昇した状態で水中に排水されることとなっており、その量が多大なことより、排水溝先の海面水温は常時1℃以上の上昇が予測されている。これは気温にも影響を与え続け、さらに半閉鎖的な環境にある瀬戸内海の水温を恒常的に上昇させ続けることが予想され、漁業にも多大な影響を与えると考えられるにもかかわらず、環境影響評価書では、この点がまったく検討されていない。
 (カ) 事故発生時の壊滅的な打撃
   原子力発電所からは、日常的に微量の放射性物質が環境中に排出される。当該海域が半閉鎖海域であるために、このような放射性物質は拡散しにくく、当該海域に滞留しやすい。地震などに伴う自然災害や人為ミスなどに由来する事故の発生は、長期的に見れば、完全に回避する事は困難であろう。たとえ事故が小規模なものであっても、ここに滞留した放射能汚染は、食物連鎖を通して魚介類に蓄積し、それによって、漁業が壊滅する恐れがある。ささいなことでも、甚大な風評被害が起こることも予想される。これらの点が全く検討、評価されていない。
 (キ) 事業者の不遜な姿勢
  ① 中国電力はアセスメント実施過程で科学的なデータに基づく警告を繰り返し受けてきた。しかし、事実に対する検討を怠り、杜撰なアセスメント手続きを実施したのである。
  ② 環境影響評価書中間報告書対するものではあるが、日本生態学会中国四国地区会は杜撰なアセスメントに対し、「当地区会は・・・このような環境影響評価に基づく開発が行われるならば、唯一残されたと言って良い貴重な生物と生態系に取り返しのつかない影響を及ぼす可能性を強く危惧するものである。」と指摘した。日本有数の大きな学会組織である日本生態学会は、大会決議によって、環境アセスメントの不備を指摘した「要望書」を事業者に手渡している。この他にも当該計画の環境アセスメントの不備は、これまで再三指摘されている。しかし、事業者(中国電力)は今に至るまでこのような指摘を完全に無視している。
  ③ たとえば、前記のように「冷却水の取水排水に伴う恒常的な生態系破壊」が予想され、その旨、日本生態学会によって指摘されているのであるが、事業者の最近の報告書では、何の根拠もないまま、「(魚の稚仔、卵、動物プランクトンなどは)、冷却水の復水器通過により多少の影響を受けると考えられるが調査海域に広く分布していることから影響は少ないものと考えられる」と記されている。
  ④ この不遜な態度は、まさに、これまでの日本の数々の公害・環境問題(たとえば水俣病や最近の諫早湾干拓事業にかかわる問題)を引き起こしてきた元凶と言えるものである。諫早湾干拓事業などの過去の事例は、きちんとした環境アセスをやらず安易に開発をすすめたことが、後でどれほどの災い(沿岸住民の直接的な苦しみや裁判の長期化などに伴う社会全体の疲弊)をもたらすか、如実に物語っている。そのような歴史からの教訓を一切無視した開発行為は、災禍を未然に防ぐという「予防」の見地から、認められるべきではない。
2) 瀬戸内海環境保全特別措置法
 (ア) 瀬戸内海環境保全特別措置法は、「瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等に関し、瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画(以下この章において「基本計画」という。)を策定しなければならない。」としている(3条1項)。これを受けて山口県は基本計画において「瀬戸内海において、海面と一体となり優れた景観を構成する自然海岸については、それが現状よりもできるだけ減少することのないよう、適正に保全されていること。」を定める。これは瀬戸内の自然海岸が著しく減少し希少となっているため、瀬戸内海環境保全審議会が「瀬戸内海における埋立ては厳に抑制すべきであると考えており、やむを得ず認める場合においてもこの観点にたつて別紙の基本方針が運用されるべきであると考えている」との考えに立っていることから定められた。
 (イ) 本件埋立免許では、免許したものであるが、詳細調査も完了がないため、必要性が検討できず、必要最小限度の埋立かどうか不明である。公有水面埋立法4条1項3号は「環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」と定めているが、本件は瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく基本計画に違反し違法な免許行為である。

第8 結論
  以上から本件免許処分は違法であるから取消を求め本訴を提起した。
証  拠  方  法 
口頭弁論において、必要に応じ提出する。
附  属  書  類
1 委任状                   

                                            以上

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