2010年3月4日木曜日

中村隆子さんの意見陳述書(第1回公判)

陳  述  書

平成21年8月19日
山口県熊毛郡上関町大字祝島315番第3地
中 村  隆 子

 私は、本訴訟の原告になっている中村隆子です。昭和5年3月30日、朝鮮全羅南道で生まれましたが、終戦後引揚者として祝島に帰り、いらい79歳になる今日までずっと祝島で生活をしています。祝島で結婚し、6人の子供を夫と一緒に『ほこつき』という漁業をしながら育て上げ、夫の亡くなった今も祝島で生活を続けています。今は、盆や正月などに成長した子供達が孫を連れて帰ってくるのを楽しみにしていますし、子供達のつれあいもみんな祝島のことを好いてくれており喜んでいます。

 また、原発問題が起こった当時から祝島婦人会の副会長をしており、平成8年からは祝島婦人会長として、島の生活改善などに取り組んでいます。

 祝島は、上関原発建設予定地から西に4キロしか離れていない現在人口500人程度の瀬戸内海の離島です。島では農業・漁業が中心ですが、最近では自然豊かなきれいな海で育った海産物や無農薬の農産物を活用した加工品つくりにも力を入れるとともに、島特有の歴史・伝統文化、豊かな自然景観などを活かした観光面での取り組みも進んでいます。

 しかし今、祝島の集落の前に、また私の家の窓から直接真正面でしかも毎日朝日の昇る位置に、原発がつくられようとしており、またそのために自然豊かな対岸の海が埋め立てられ、海が汚されようとしています。

 夫と共に働き、6人の子供を育てあげた『ほこつき』は別名で『いさり漁』とも言われますが、船の上から海に箱メガネをつけて、それで海の底にいるアワビ・サザエや魚を、長いさおの先につけてあるほこで突き刺してとりあげる漁法です。何にも増して澄んだきれいな海でないと仕事にはなりません。

 今まで、きれいで豊かな自然の恵みを受け、生活をしてこれたし、これからもずっと島で生活していく私たちにとって、原発のために埋め立てを行って海を汚されることは、島で生きていくためには死活問題であり、絶対許せるものではありません。

 このたびの、山口県・知事の交付した公有水面埋立免許は、過去から未来につながるはずの、離島での生活がきわめて困難になる結果をもたらします。

 中国電力による原子炉設置許可申請がいまだ出されておらず、しかも祝島島民をはじめ多くの人達の反対の声がある中で、どうして埋め立てを許可するのか山口県・知事の姿勢に大きな怒りを覚えます。

 県民の命と生活を守るべき立場であるはずの山口県・知事は、金と力を持っている事業者のほうを向いているとしか思えません。

 「住みよさ日本一の県」を目指している山口県・知事が、どうして県内に「住みにくさ日本一」になりかねない地域が出来ることに「協力」するのか不思議でたまりません。

 あらためて、山口県・知事が埋め立て免許を取り消すことになるよう、心から願っています。

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