「自然の権利訴訟」第10回公判の報告
11月30日(水)山口地裁にて第10回公判が開かれました。晩秋の深い紅葉とおだやかな天候に恵まれたこの日、祝島の埋立免許取り消し訴訟が時間差で行われることもあり、祝島の漁師さんたちをはじめ、そちらの裁判を応援する方たちとも合流する形で、県内外から40名ほどの傍聴者が駆けつけてくださいました。「自然の権利訴訟」公判の内容をお伝えします。
■埋め立て免許交付にあたって、県は原発の安全性を審査していない!?
海はみんなのものなので、埋め立てを認める(免許を与える)ためには、いくつかの条件が必要です。
その代表的なものは、
・その埋め立てが、国土利用上、適正かつ合理的であること
・環境保全および災害防止に十分配慮されていること
ですが、
県は「埋め立てた土地がその後どう使われるかは審査の対象ではなく、埋め立てのことだけを審査した。したがって原発立地が合理的であるかとか、原発が安全であるかなどは審査していない」と主張しています。
これは原告側からの批判をかわすためになされている主張ですが、埋め立て免許を交付する立場にありながら、原発の安全性については審査していないと開き直る姿勢、、みなさんどう思われますか。
■実際には、電源開発基本計画に組み入れられたことで、よしとした。
原発を立地する際にクリアされなければならない条件は、かつては「電源開発促進法」、現在では「重要電源開発地点の指定に関する規定」によって定められています。代表的なものは、
・アセスメントが終了していること
・公開ヒアリングが終了していること
・地元市町村長の同意が得られていること
・知事の意向について考慮がなされていること
・国土の総合的な開発・利用の見地から適切な考慮がなされていること
・人の健康の保護および自然環境などの保全が図られていること
などです。
事業者から出された申請がこれらの条件をクリアしたならば、経産大臣は電源開発基本計画の中にその原発を組み入れることができます。
ご覧の通り、埋め立て免許に必要な要件を内包していますので、県知事は上関計画が電源開発基本計画に組み入れられたことを受けて、それを根拠に埋め立て免許を交付したことは明らかです。
■では、電源開発基本計画に組み入れられる手続きは適正であったか?
そこで、経産大臣が中国電力から申請を受けて上関計画を電源開発基本計画に組み入れた手続きが適正であったかどうかが問題になりますが、以下のようにいくつかの違法性があります。
まずは、安全性の問題。これまでの公判でも指摘してきているように、同計画は耐震設計上重大な瑕疵があり、人の健康の保護および自然環境などの保全が図られているとは到底いえません。
そして、知事の意向を考慮したかどうかについて。経産大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会が審議した中国電力の申請は、知事の意向を踏まえて出したとは言えない時期に出されており、それをそのまま認めたことは違法であるといえます。
■国土の総合的な開発・利用の見地から適切な考慮がなされているとは?
以上に加えて、籠橋弁護士は法廷で以下の内容(準備書面にはない)を口頭にて補足されました。
「国土の総合的な開発・利用の見地から適切な考慮がなされている」とは具体的にはどういうことなのか。それは、人口過密地帯を避け過疎の地域に原発をつくるということです。このような割り切り方が本当に許されてもいいのでしょうか! 東京湾ではできない原発がどうして上関でならば許されるのでしょうか。この裁判はそれを問うてゆくことにもなります。
このことは原発問題にかかわる多くの人々が関心をもっている普遍的な問題です。私たちの社会がかかえる根源的な問題のひとつといえるかもしれません。自然の権利訴訟という土俵で、このことが改めて問われているという展開を目の当たりにして、野生生物たちが人間社会のありようそのものを問うているのだなあ、、と思いました。
■違法な組み入れ計画に基づく公有水面の埋め立て免許は違法である。
以上のように、上関計画は立地に際して必要な要件を満たさないまま電源開発基本計画に組み入れられたのであって、これに基づいて県が行った公有水面の埋め立て免許交付は違法である、との主張が行われたのでした。
■次回の予定
次回の公判予定は、3月21日(水)11:00から
今回と同様、祝島の埋立免許取り消し訴訟が10:30からありますので、傍聴を希望される方は10:00までにお越しくださいませ。
文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)
0 件のコメント:
コメントを投稿