2013年9月28日土曜日

「自然の権利訴訟」第14回公判の報告


 昨年の暮れ12月5日(水)山口地裁にて第14回公判が開かれました。

 前回、埋立免許の期限切れが迫る中、黙り(だんまり)を決め込む県側のようすを指して‥
「隙あらば計画を復活したいと願っている原子力村のゾンビたちが、いかにして今後の可能性を残そうかと水面下でもがいている気配を感じさせました。」
と、報告させていただきましたが、今回はその印象が確信にかわると当時に、その具体的な作戦を垣間みることができました。

 法廷での実質的なやり取りは、事態が進展いていないため、ほとんど行われず、舞台はすぐに別室での「進行協議」に移りました。これは、訴訟の進め方をどうするかを当事者間で話し合うもので、傍聴者は入ることができないのですが、私は原告の一人として立ち会うことがことができました。

■「免許はまだ失効していない」という見解
 そこで県側が言ったことに少し驚き、また、なるほどそれが作戦か‥とも思いました。被告代理人はなんと「免許はまだ失効していない!」というのです。

 つまり、免許の失効を目前にして中国電力は免許の更新を申請したのだそうです。そして、県はいまだそれに対して却下とも認めるとも判断を下していなくて、そういった状態においては、以前の判断が生き続けるというのが内閣法制局の認めるところの「慣例」なのだそうです。

 ただし、この慣例は本来、立場の弱い人が行政の手続きの緩慢さの中で、その権利を不当に失うことのないようにとの配慮から認められていることのようで、今回のように力あるものの横暴を助長するような使われ方は、問題にしていかなければなりません。

■政策の変更を待つ姑息な引き延ばし
 それはさておき、進行協議はこれまでの流れから基本的に埋立免許が失効するであろうことを前提に、この訴訟をどう終結するかを話し合う予定だったので、県が半ば応じないという姿勢であるため、結論は先送りということになりました。

 報告集会にて赤津弁護士は「延長みたいで、せっかく来てくださったみなさんには申し訳ない」とおっしゃってましたが、悪いのはひとえに姑息な引き延ばしを図ろうとする県側です。免許を一旦失効させてしまうと改めて交付する際のハードルが高くなるかもしれないことを見込んでいるのです。

■自民党が再び政権の座に
 さて、この報告を執筆している現在、被告の思惑通りといっていいでしょう、衆院選を経て再び自民党が政権の座に着いてしまいました。一旦はついえたかに思えた上関原発の新規立地計画は、忌々しいことですが、存続の可能性を残したのです。

 しかし、自民党の圧勝は民主党への失望と小選挙区制のからくりの中で起こった現象であって、必ずしも分厚い支持によるものではありません。脱原発を望む世論そのものも特に大きく後退したわけではありません。当の自民党自身がそのことは分かっていて、今は猫をかぶっています。いつまでも猫のままでいてもらうために、歯止めとなる民意を示し続けなければなりません。

■まだ気の抜けない局面が続きそう
 細かな補足ですが、前回、原告から二つの申し立てが出されていました。ひとつはこの裁判の審理に中国電力も当事者として参加させるよう要請するもの、もうひとつは、埋立免許は既に事実上失効してしまっているのではないかということの確認を求めるものでした。それに対して今回、被告はいずれも却下するようにとの主張を書面にて行っています。

 一方、報告集会では長島の自然を守る会の高島さんより心強い報告もありました。守る会が上関原発予定地周辺で確認してきた希少な貝類17種が絶滅の危惧される種としてレッドダータブックに加えられることになったそうです。環境省によるお墨付きが得られたことで、この地の自然を守ってという主張は、これまで以上に無視できないものとなるはずです。今後も多くのみなさんの応援をよろしくお願いします。

文責:小坂勝弥(原告の一人・京都在住)

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